MAGAZINEという言葉の語源は、アラビア語で「倉庫」を意味する"makhazin"だった。
1704年に最初のマガジンを刊行したのは、「ロビンソン・クルーソー」で有名なダニエル・デフォーだ。
デフォーが英国国教会を批判して投獄されたあとに刊行した雑誌のタイトルはその名も「The Review」。
デフォーが雑誌に求めた目的は、権力に疑問を呈し、批判し、評論し、世論に影響を及ぼすことだったという。
ジャーナリストの草分けとも言えるデフォーは、その政治的な活動と言論が原因で拘留され、さらし台に上げられたこともあったが、その筆を折ることはなかった。
デフォーが始めた雑誌の精神を、これまで多くの雑誌が受け継いできた。
それでも"雑誌"は時代とともに姿を少しずつ変え、世界の多くの雑誌が広告依存型のビジネスモデルに移行してきた。
今、未曾有の経済危機のなか、インターネットにおされる形で少しずつ圧迫されてきた紙にプリントされる『雑誌』の存在自体が危機にさらされている。
本屋にあふれるほどあった雑誌が、静かに少しずつ姿を消し始めた。
今、前人がつくってきた「雑誌」が、私たちの文化のなかに必要かどうか、考えなければならない時がきている。
そしてそれは、たとえ紙にプリントされる媒体の最後のひとつがなくなったとしても、権力を評論し、時には批判し、世論を代表する媒体を持ち続けることができるかどうかを考えることでもある。
デフォーはたくさんの名言を残したが、そのなかにこんな文章がある。
The best of men cannot suspend their fate: The good die early, and the bad die late
人間が最善を尽くしても、止めることのできない運命がある。
良きものは早く失われ、悪しきものは生き残る。
デフォーの言葉の意味を、もう一度考えてみたい。
text by yumiko sakuma
佐久間裕美子 www.yumikosakuma.com
1973年生まれ。東京育ち。
1996年に渡米。1998年からはニューヨーク在住。
慶応大学法学部政治学科卒業。エール大学で国際関係論修士号を取得。
新聞社、学術出版社を経てロイター通信に勤務後、2003年からフリーの
ジャーナリスト、ライターとしてNYをベースに活躍。