Social

>> Social : Home

  • Posted on
    2010.03.12
  • posted by kenshin.

食糧自給率 ~日本に向き合う~

高度な工業化を達成し、技術、生活の水準の高い日本は、先進国と呼ばれています。 先進国とは、技術で先を行き、豊かであり「G7」にも加わっている国のことですが、我が国の食糧の自給率は、極めて低いと言われています。 にもかかわらず多くの国民は、輸入される食糧に頼って、美食飽食を続けています。世界の食料事情からすれば、美味い不味いを言っている場合ではないのが現状でしょう。目の前に食べ物がたくさんある間に、食生活に対する考え方を変える時がきているではないでしょうか?
輸入してまで食べ残す不思議な国、日本。
食糧問題は、エネルギー問題などと同様に、国の存亡がかかっている問題で、食糧の自給率の低さや食べ残しの多さなどの矛盾も、日本の将来の為には、その方向性を考える必要があるのでは無いでしょうか?







日本と同様に、食料の6割、石油関連物資のほとんどを輸入に頼ってきた国があります。 それが社会主義国キューバです。
社会主義革命によって、現在も社会主義政権が支配する国。旧ソ連時代にはソ連から莫大な支援を受けて、輸入による物資を国民に安く配給することが可能でしたが、ソビエト連邦崩壊後は、輸入の仕組みそのものが崩れ去ったうえに、敵対勢力の中心であるアメリカからの経済封鎖は続きました。同時に深刻な経済危機にも見舞われ、ソ連圏の崩壊とアメリカの経済封鎖で、食糧、石油、医薬品が途絶する中、まさに物質不足と都市部では自分たちの食べるものがない状況が続き、国の崩壊の危機とも言うべき状況に直面したのです。

このような状況の中で、キューバ政府が優先順位のトップにあげた政策は「一人も飢えさせないこと」を目的とする食糧問題の改善で、国家規模で有機農業と都市農業を推進する体制が、急速に整えられていきます。そこで政府が打ち出した最大の取り組みは、都市農業改革でした。農業とは無縁だった都市部では、有機農業による自給菜園や公共施設、民家などで余っている土地を活用し、作物を育てることを促進させた都市農業を推進。国民それぞれの家や空き地で農作業を行い、政府による雛鳥や豚の配給まで行われました。結果的には、トラクター用の燃料が無くなり、化学肥料が途絶えたことで、時代をさかのぼるかのような牛耕や生ゴミ、ミミズなどを活用した農業がおこなわれ、食の問題に取り組んでいくことができたのです。

現在、全人口(約1100万人)の約5分の1を抱えるハバナ市では、およそ220万人が住み、約8000を超す農場や菜園によって、市内全域の野菜消費量の約半分がまかなわれています。今、キューバは、世界の最先端有機農業に取り組み、農薬を使わないで農業をおこなう先進国であり、自然エネルギー、環境教育、リサイクル、伝統医療と国全体がエコロジーの実験場、見本市となっています。
有機農業革命とでもいうべきキューバ政府がおこなった政策は、本来なら日本が目指すべき政策だとは言えないでしょうか?

概ね先進国における農業政策は保護政策、発展途上国では抑圧的政策がとられていますが、これは経済が発展するにつれ農業の役割が変化するこということで、農業がいかに政府介入を伴う産業であるかをも示しています。
途上国では、食料不足は深刻化を極め、小麦粉に泥をまぜ増量したパンさえ不足しています。 日本では「高くなった」で済みますが、約30カ国で食料難に起因するデモや暴動が起きています。
90年代、ローマで開催された「世界食糧サミット」では、全ての国において飢餓を撲滅するための継続的努力について議論が交わされました。まず2015年までに栄養不足人口を半減することを目指すとの政治的意思を宣誓しました。現在、食糧問題については、断片的ながらも人々の意識をあおるような報道が増えており、それらの報道では、21世紀の第1四半期(2010~20年代)に何らかの形で食糧供給に支障を来たすということが想定されています。

1995年に57億人だった人口は、2010年には69億人、2025年には80億人と増加していき、そのほとんどが開発途上国での増加といわれています。さらに、先進国でも乳幼児の死亡率の低下、医療技術の進歩による高齢化などが進んで、人口増加が急激に進みました。過去の歴史を見てみると、人口が増加すると、疫病や飢餓の大量発生などの要因が働いて、人口抑制の方向へコントロールが働く傾向にある様です。

現在、世界には10億人以上の飢餓・栄養不足人口が存在しており、飢餓と食糧安全保障は地球的規模の問題で、世界人口の増加等に鑑み、緊急に一致した行動をとる必要がでてきました。国連食糧農業機関(FAO)は、十分な栄養が取れない状態にある飢餓人口が、過去最高の10億2,000万人になるとの予測を2009年に、発表。
世界的な金融危機や政治的不安、食料価格の高止まりなどの問題を受け、FAOのディウフ事務局長は「飢餓人口の急増が世界平和や安全保障に対する脅威をもたらす」として、国際的に具体的行動を早急に取るよう訴えています。
今や食糧問題は地球環境問題と同様、現代におけるキーワードであり、世界各国で危機を回避する対策として、低コストで農地が管理でき、バイオテクノロジーや環境に調和したシステム、最先端技術を駆使した穀物生産農場を設けるなど、食糧の安定供給に向けて、さまざまな提案がなされているところです。

日本は四季に彩られ季節に恵まれ、豊かな大地で育まれた農作物が、私たち日本の食生活を支えてきました。
本来日本に豊富にあった豆などの穀類や魚介類までも、近年は海外からの輸入に頼らなければならない国になってしまいました。
日本の食料自給率は低下しており、そのことが食料の安全保障に対して不安をもたらす材料となっています。
現在、政府は「食料・農業・農村基本計画」の見直し作業に入っており、また、40年にわたり続いてきてコメの減反政策についても批判が高まっている現状で、方や世間は食糧の生産→加工→消費の過程のなかで、まだ食べられる食糧の2~3割を廃棄しているという現実、その割合が世界一高いのではないかと言われています。

遺伝子組み換えやバイオテクノロジーへの不安という新しい問題がでてきたなかで、安全な食品を求める声も高まりつつあり、日本では、近年無農薬野菜をつくっている農家も多くなってきています。
無農薬野菜は高い価値を認められていましたが、輸入食品の安全性の問題をきっかけにして、よりいっそう国内産の無農薬野菜が注目されるようになってきています。
環境のため、人間のため、そして自分の健康のために、僕たちはいったい、どんな食生活を心がけるべきなのでしょうか?

もう少しだけ、食糧のありがたみを一人ひとりが再確認して、世界の状況と食糧問題、に関心や興味を持ち、生きる上で必要な食糧の問題と向き合う時期がきたのではないかと思います。



[参考資料]
小さな国の大きな奇跡
農林水産省
Wikipedia
日本農業新聞




TEXT BY J

top