Valentimは、ポルトガル出身のアクセサリーデザイナー。
日常に溢れるモノをラグジュリーなピースへと創り上げる彼の作品は、市場に出回っている普通のアクセサリーとは一線を画し、一つ一つの作品が独特の存在感を放っている。Valentimの作品は、2007年に行われた「ITS #7」のアクセサリー部門においてCollection of the Yearを受賞するなど、現在ではヨーロッパを中心に世界的な評価を集めている。
彼は、10人ほどのアーティスト(ファッションデザイナー、写真家、プラスティックアーティスト、画家、彫刻家など)とスタジオを共有しており「それはとても刺激的な環境で、彼ら全てが持っているクリエイティブなエナジーが私の作品に影響を与えてくれます。」と語っている通り、非常にアイディアに富んだ作品が多い。
主な特徴としては、コンセプトを表現しさらに深めるマテリアル選びが挙げられる。特別な効果や他の使い方をすることによって効力を発すると考えられるピースを選ぶことで、他のアーティスト達との違いを多く生んでいるのではないだろうか。
表現する上で欠かせないのが、インスピレーション源。彼の場合、アンティークショップ、インターネット、ミュージアム、書籍、映画、音楽、などだが、しかし何と言っても日々ストリートに溢れている様々な種類のものやマテリアルがある地元のフリーマーケットが最も刺激的なのだとか。
更に、その空気感からより多くの影響を与えてくれる2つのアトリエもまた、とても重要な場所なのだそうだ。アトリエの一つは古い工場の中にあり、その場所で引きこもり作品のクリエイティブな部分を創り上げていくのだが、もう一つ彼の住む街の中心に位置し、彼らのチームが働いている場所もまた、彼に色々な刺激を与えてくれる大切な場所なのである。
そして、彼が特に好むマテリアルの1つがメタルだ。メタルは技術の多様性を含んでいるので、他のマテリアルと共通の領域を見つけ、効果的で思いもよらない方法に結合させることで、より新たなインスピレーションをもたらしてくれるのだと、彼は語る。
また、18歳のときポルトガルで最も有名なファッションデザイナーであるAna Salazarと共に作品を作り始めたのだが、彼は完全に彼女の作品に魅了された。あれから20年、今でも2人は共同で制作し、常に刺激に溢れた挑戦を続けている。ファッションにおいて2人は同じ考え方を持ち、彼女は常にValentimに刺激を与え奮い立たせ、それは作品の飽くなき追及へと繋がっている。
Valentim曰く「ファッションと関連付けられたジュエリーの役割は、ガーメントから発展したコンセプトを再認識することなのだ」と。しかしジュエリーそのもののコンセプトは、もしそれ自体に芸術的な表現を伴い、クリエイティブなプロセスを含めば、シンプルなデザインから更に深いところへ行くことが出来る。彼はそれらを共存させ、補完しあえる場所を見つける事に興味を持ち、常に挑戦しているのだ。
「辛抱強く1つ1つ作品を創りつづけなければ、何事も達成することは出来ません。」
特に印象に残るこの言葉は、他の何事にも通じる「普遍性」の様なものなのだろう。Valentim Quaresmaという芸術家の今後に、暫くの間注目してみたい。
text by GM