ファッションヴィジュアルはラグジュアリーブランドの広告収益により雑誌広告、雑誌タイアップなどによるブランディングが行われ、ファッション雑誌によるヴィジュアル的な戦略がとられてきたのであったが、世界経済の低迷など様々な理由によりメジャーファッションマガジン側がその雑誌広告収入に迎合する形でファッションエディトリアルはよりわかりやすさをもとめてブランディング化された結果、カタログヴィジュアル化されてゆき、ファッションヴィジュアルとしての強烈な個性は失われていった。
しかし1990年代半ばに起こったインディペンデントマガジンムーブメントにより
世界中の都市に「アートを愛好し、かつインディペンデント雑誌を愛好する嗜好を持つ人々の層」が生まれ、ファッションの持つ「自由な考え方」はラグジュアリーブランドの広告収益に左右されないファッションヴィジュアルとして新しい局面を迎え、広告収入で経営を行うメジャー紙と個人出版によるインディペンデント雑誌との2極化が起こり、コマーシャル化していないヴィジュアルの強烈さは「生のファッションヴィジュアル」として「DOUTCH」や「PURPLE」マガジンの誕生に代表されるように、未だ強烈な印象を残す。
しかし2000年代に入りファストファッションが台頭し、パリコレ神話性崩壊、トム フォードがGUCCI時代に行ったモードの民主化によって、ファッションは消費についてだけの狭い世界に閉じ込めるべきではなくなったのは事実。
ファッションヴィジュアルについてもリファレンスという名の下のコピー&ペーストという掟破りの技が台頭し始め、インディペンデントマガジンのファッションエディトリアルすら画一化、既視感化され、フラット化されていく、、、
特にデジタル機器の発達はクリエイター側のスタートのハードルを下げることになり、誰もが作れるファッションビジュアルが起こるようになる、それは、個性化し拡散化しながらもインターネットの浸透や広い間口化により結果的に没個性化を迎える事となる。
2010年 世界でファッションインディペンデント雑誌が一番多く誕生したにもかかわらず、強烈な個性のあるファッションヴィジュアルを残したりやムーブメントを未だ起こせずにいるのはのはそれを象徴しているのではないだろうか?
もはやファッションの定義はめまぐるしく変化し、膨張し、ファッションヴィジュアルは多様化し様々な思考の対象になる時代が訪れている。
そのきっかけとなる種はたくさん生まれだしている、今や 世界最大大手ファッションビジネスカンパニーとして君臨する LVMH モエヘネシー ルイヴィトンSA社(傘下ブランドはざっと ファッションブランドだけでも Louis Vuitton、 LOEWE、 CELINE、 KENZO、 BVLGARIEMILIO 、PUCCI、 Berluti 、Dior/Christian Dior 、GIVENCHY 、FENDI、 Donna Karan 、MARC JACOBS 、Thomas Pink 、StefanoBi )
が100%出資して行っているヴィジュアルコンテンツ NOWNESS(http://www.nowness.com/)がいい例であろう。
インターネット上でファッション、デザイン、旅行、コンテンツ、写真、を毎日1つ提示してそれがあなたにとって気に入ったか(Love)、そうでないか、(Don't love)を投票できるようになっている。
その結果は、このサイトに情報として蓄積され、インタラクティブエクスプローラーとして働き、好みのコンテンツ、あるいは人気のコンテンツに誘導する仕組みとなっている。
NOWRESSを代表するように、ファッションブランドは もう既に、雑誌媒体などを必要とせず、直接に我々にヴィジュアルを投げかけるようになった。発信側からダイレクトに人々に伝えるということが始まっている。
こういった動きはインターネット上だけの事ではない、ファッションブランドJ.LINDEBERGが作成するヴィジュアルブック 「THE DOCUMENTARY &THE DREAM」も素晴らしい例、カルチャー、ポートレート、ランドスケープなどで構成されたヴィジュアルブックはブランド側からダイレクトに人々に今のJ.LINDEBERGが考える今のファッションのムードを伝える様なモノになっている
敏腕ファッション雑誌編集者が雑誌作成の場を離れ、次々とこういった新しいヴィジュアルコンテンツを作成する場所へ移り始めている事実はもう既にファッションヴィジュアルの現在は流動し、変わり始めているという事に他ならないのではないか?
人間の感覚は80%視覚に頼っているといわれている、その視覚に強烈に訴え続け、新しいものを提案し続け、影響力を及ぼしてきたきたファッションヴィジュアルは今、何処へ向かおうとしているのだろうか?
TEXT BY KESO