未だ信じがたいマックイーンの死にはまだまだ深い哀しみであると共に、多くの人々がこの事実を様々なバックグラウンドと照らし合わしながら、儚く慈しんでいる。
ファッション業界は勿論、個人的にどこか世界が取り巻く環境や様々なことに対しての何かの鎮魂にも思えてやまない。
彼が追い求めたクリエーションには美の創造と破壊がくりかえされ、多くの人の心を動かしたのはまぎれもない真実。
ファッションデザイナーとして、「アンファン テリブル」恐るべし子供と評されながらも伝統的なテーラリングと芝居がかった雰囲気をミックスした挑発的なデザインは、女優のケイト・ブランシェット(Cate Blanchett)やモデルのケイト・モス(Kate Moss)をはじめ多くの人々に愛された。彼はまさしくファッション界が誇る【異端児】であると同時に、クリエーターとして誰もが認める存在であった。
その傍ら、常に革新的である事は彼にしか感じ取れない見えない何かが、きっとあったのであろう。
この記事からもそのクリエーションの裏側を少し垣間見れる。
アレキサンダー・マックイーンがジバンシーに抜擢された当時のコレクションは、周囲から酷評されました。新聞雑誌などのインタヴューにて、本人もその時期は精神的につらかった時期と語っています。
例えば、オートクチュールにモデルを使わずにマネキンを使用。これはクライアントの年齢層を考えると若いモデルよりもイメージしやすいからという理由でした。その他、ファッションショーでもモデルの顔にペインティングをして、モデルの感情・表現力を取り払うスタイルをとるなどしました。
マックイーンは「まず、ブランドの歴史やユベール・ド・ジバンシーの時代を全て忘れることからはじめたんだ。」との本人のコメントにあるように、自分流のデザインをしていきました。マックイーンの就任後、売上も伸びたのですが、過去のブランドの方向からは外れ、あくまでマックイーン流を貫いたデザインを、より機能的にしたためでした。
このように伝統等を無視したスタイルをとり、誰かまわずいいたい放題の性格からか、公私にわたってゴシップのネタにされることが多いようです。一方で彼が「天才デザイナー」であることは誰もが認めることでした。
マックイーンの本質は形式的なものからの反発にあるように思います。以前、マックイーンはショック・アーティストのダミアン・ハースト(ガラスのケースにサメを入れて刃物を突き刺した人です。)に近いと語った批評家がいましたが、それも分かる気がします。
マックイーンはジバンシーの後、名門のメゾンのデザインを行っていませんが、これは名門のメゾンの制約の元で働くことに嫌気が差しているのが原因のようです。
日本をモチーフにした数年前のデザイン、それは日本の鎧を仕立ててドレスに替えてしまったデザインなのですが、これは未だに印象深いデザインです。着ている女性がより「強い」と感じる彼のデザインの特徴は健在で、文字通り日本の伝統をモードに置き換えることで「破壊した」といえるのでないかと感じました。
From fashion press
彼がファッション業界に残した軌跡は、多くのファッションジャーナルや各界の著名人のコメントからも染み出ている様に彼を愛してやまない、いつもそばにいた家族や友人達はそれぞれが彼に対する計り知れない深い思いは今迄の彼の存在を示すそのものであり、それはまさに彼が彼である為の人生におけるクリエーションの表現であった様にも感じる。
そのクリエーションには、彼の思いや愛が沢山詰まったもの。
それはファッション業界もしかり、今世界が失いつつある最も必要とされる、未来への想像であり、ファンタジックな夢の世界。世界の人々に彼は人生のクリエーションと共に残してくれたかもしれない。
生と死を甘んじて言葉では伝える事は安易に出来ないが、存在していた人が一人でもいなくなる事は、この世に存在する全ての人に対して何かの使命を感じ見直す時であると個人的に強く思う。
また、多くの著名人が彼の悲報に対してのコメントを残している。
そんな中、カール・ラガーフェルドのコメントには深い愛情と共に現実を見据えたものを感じた。
「彼自身について知っていることはごくわずかしかないが、多大なる成功をもたらした作品のことは知っている。彼の作品はとても興味深く、決してありふれた陳腐なものでは無かった。死とは常に、多少なりとも魅力的なものであるし、彼のデザインには時々非人間的な面があった。何とも言えないが、あまりにも頻繁に死と戯れると、死に魅了されてしまうのかもしれない。」
「マックイーンは作品のなかで、常に死とたわむれていた。どういうわけかわからないが、成功して、才能に恵まれていても、それだけでは、幸せになるためには十分ではないということだね。私はいつも彼の作品のなかに、少し人間性がそぎとられたような一面を見ていた。世界や現実から、距離を置こうとするような一面を。ファッションとはそのようなものだ・・・・・・・丈夫な胃袋をもっているわけではないのに、プレッシャーをかけられたら、不安やそのような一面にさらされるのだ」
From TIMES
ファッションデザイナーであると同時に、彼も又一人の生身の人間であり、多くに人に愛されたことはまぎれもない真実。
そしていつまでも心に刻まれて行くだろう。
只、決して生死を美化してならない事も忘れては行けない。
人々が彼の残した軌跡を胸にその先を見据えて、、、、
Rest in peace
text by HM