Alexander McQUEEN、ANNA SUIに続く〝デザイナー・コラボレーション〟の第3弾として、「Target」はJean-Paul GAULTIERを起用。また、インテリア雑誌「ELLE」主催のエクスポジション〝La Suite ELLE DECORATION〟では、Jean-Paul GAULTIERが今年のデザイナーに選ばれた。
これは、トロカデロ広場のシャイヨー宮の上階にあるアパートの内装を、毎年違うファッションデザイナーが手がけるというもの。ここでもその才能は如何なく発揮され、彼らしいデザインを披露している。
また、この夏には「Levi's®」とのコラボによるメンズとレディスのカプセル・コレクションを発表。更に「La Perla」とコラボしたランジェリーラインは、今秋(11月から)発売予定。ゴルチェは、水着やマドンナのために作成した円錐ブラなどの印象が強いが、今回が初のランジェリー・ラインとなる。
「ギラギラ」した攻めのオーラとは違い、むしろ彼のオート・クチュールにみられる〝ある種の円熟味〟に達したかの様なクリエーション。その源は、一体何処にあるのだろうか?そして、この先何処へ向かって行くのか?
80年代、「kitschでavant-garde」なファッションの代名詞であったJean-Paul GAULTIER。
矢継ぎ早に発表されるコレクションには、ボンデージやランジェリー・ルックなど、奇抜でエキセントリックなモノも少なくなかったが、それは、どちらかと言えばパリのクチュールよりもロンドンのストリート・シーン、特にパンクの精神に親近感を覚えていた彼の当時のデザインセンスとファッション的志向性にその理由があった様だ。その後も、アバンギャルドとクラシズムが融合した独自のスタイルで、パリコレクションにおいて多くのジャーナリズムの人気を集めることとなり、一躍トップデザイナーへと上り詰めて行く。
更に、エンターテイナーとしても知られるゴルチェは、Tony Mansfieldとのコラボレーションでレコードを発売。Peter Greenaway監督の『The Cook The Thief His Wife & Her Lover(コックと泥棒、その妻と愛人)』や、Pedro Almodóvar監督の『Kika』、Jean-Pierre Jeunet監督の 『The City of Lost Children』やLuc Besson監督の『The Fifth Element』等、映画の衣装を数多く手がけてきた。また、Madonnaのワールドツアーの衣装やMarilyn Mansonのステージ衣装も担当している。
そんな「時代の寵児」だったJean-Paul GAULTIERだが、折しもTom FordやベルギーのMartin Margielaが台頭してきたのと時を同じくして、自身のビジネスの広がりと反比例するかの様に、その評価は次第に薄れ始める(1988年「Junior Gaultier」をスタート、1992年「Gaultier Jeans」をスタート、1993年「Jean-Paul GAULTIER Parfums」をスタート、1997年「GAULTIER PARIS(haute couture)」「JPG」をスタート)。
しかし、奇しくも自身がデザインしているオートクチュール「GAULTIER PARIS」が評価され成功を納めると、Martin Margielaから引き継ぐかたちで、2004年『HERMÈS』レディースプレタポルテのクリエイティブ・ディレクターに就任(2011 S/S コレクションを最後に退任予定)。不死鳥の様な復活を果した。
パリ郊外の一般的な家庭に産まれ、お針子だった祖母の手ほどきで幼少時より洋裁の基本を遊びがてら身に付けた。その後もデザイナーになるための特別な教育は受けなかったという。その代わり、自分のスケッチをスタイリストやデザイナー達に送り続け、ようやく認められてPierre Cardinのアシスタントになったのが、彼のキャリアのスタート地点。
そこから今に至る迄、これだけ長い間トップデザイナーとして君臨し続けているアーティストは、そう多くない。今年以降も、どんな〝Cutting edge〟を見せてくれるのか、Jean-Paul GAULTIERの動向に注目したい。
text by wk