2010年に入りファッションフィルムの可能性をTHE MAGAZINEにおいても取り上げたのも記憶に新しいが、
今期のコレクションにおいて、本当に数多くのデザイナーおよびブランドメゾンが、新しい媒体方法の形として、
ファッションフィルムを発表し始めている。
その中でもパリで発表された、故アレキサンダー マックウィーンのコレクションは革新的で魅力的なショーとフィルムを見事に融合させ新たなファッションの見せ方の皮切りにふさわしいものだったと感じる。SHOW STUDIO(NICK KNIGHT)とのクリエーションは世界中をマルチメデイアの可能性を一気に加速させたのは過言ではないだろう。
今更ながら、マックウィーンの偉大さや、彼のクリエーションにかける攻めの姿勢がしっかりと痕跡が残されているのは、本当にファッション界にとって、最大の出来事だったのではないだろうか?
また、ファッションをフィルムで表現したデザイナーの先駆けとして外せないのが、これもSHOW STUDIOとコラボレーションした ガレス ビューも2010SPRING/SUMMER もアイデアに溢れ革新的なものだった。
RICHARD NICOLL,VANESSA BRUNO,TIM HAMILTON,PRINGLE OF SCOTLAND等その他多くのメゾンや新鋭気鋭のデザイナーが、アイデアを駆使し個性溢れるクリエーションをファッションフィルムに落とし込み、新たなメデイアを使い、ON TIMEに近いスピードで消費者にもアップロードされている。
これは、低迷するファッション界の革新的な出来事とも言えるだろう。
もちろんビックブランドもその流れに沿い次々とファッションフィルムを制作し発表している。
新鋭デザイナーが発表するのとは少し異なる感じではあるが、
名声とともにそのクオリテイーが大きな資本力もある中、様々な形として進化してきている。
カール ラガーフィルドがシャネルのクルーズコレクションで見せた豪華でエレガントなフィルムもさながら、
やはり注目したいのが、2010 A/W PRADA MENS コレクションにてコラボレーションしている ヤン フードン。
今や国際的映像作家として、世界中より注目されている。
上海を拠点におく彼のクリエーションは、中国アートの最前線でもあり、アジアの中でも欧米のマーケットにうまく溶け込む事のできる、クリエイテイビテイーが存在する。
アジアならではの個性が世界を魅了した例はまさに現代のファッション、アート界の進化ともとれるだろう。
PRADAとのコラボレーションをした、「FIRST SPRING」と題したファッションフィルムはヤン・フードンの作品ならではのモノクロの新旧混交となった世界観にプラダのスーツが溶け込んでいる。まさしく現代のシノワズリ、であると同時に、知識階級に蔓延するスノビズム批判とも感じ取れる。
もう一つ、ファッションフィルムの中で注目すべきは、DIORの作品。
この流れもまた映像を使った、ハイ・ファッションのプロモーション戦略でもあるが。
高級ブランドのターゲットである淑女たちがこよなく愛する、ロマンチックな映画をモチーフにしたショートフィルムであり、ヒット映画の監督と女優、というゴールデン・タッグを起用し、ラグジュアリーなブランド世界を表現している作品である。
2009年にシャネルがジャン・ピエール・ジュネ監督と女優オドレイ・トトゥが大抜擢し、オリエント急行を舞台に、すれ違う運命の恋人たちをロマンチックに描いていたのも記憶に新しいが、ディオールは、アイコン・バッグ"レディ ディオール"のためのショート・フィルム「The Lady Noire Affair」。起用されたのは映画「エディット・ピアフ~愛の賛歌~」の監督オリヴィエ・ダアンと主演女優のマリオン・コティヤール。クラシックな世界観がサスペンスを掻き立てるショート・ムービーとなっている。
この最終章でのショートムービー「LADY BLUE SHANGHAI」を手がけたのが、あの映画界の鬼才DVID LINCH。
まさにLINCHワールドを全快させた、映像で、見るものを非現実の世界に引きずり込んでくれる。
何ともファッションと融合する上で、今までにない表現が映像に落とし込まれている。
このようにファッションフィルムは急速に進化しているのが感じる最中、
1950年代フレンチヴォーグ等で活躍していた現在にでも影響を与えている伝説のフォトグラファーGUY BOURDIN が「SEA FILMS」と題して、既にファッションフィルムのルーツともなる作品を残している。
現在のようにインターネットや、デジタルビデオも存在しない頃にBOURDINの一つの表現方法として、実験的かつ、独創性で表現している。
その旨で今進化しつつあるファッションフィルムの動向も気になるのもあるが、やはり忘れてはいけないものは、資本だけに頼らない、アイデアや時代に沿った独創的なイマジネーションを駆使した動きも期待したいものである。
どんなにマルチメデイアが発展しようとも、すべては人間が作り出すアナログな創造性が元となるのだから。。
text by hm