大切にものを扱うこと。それを何となく教えてくれた感覚を覚えた。
物を作る人たちは、魂と愛情を込めて造り上げていきますが、そんな気持ちで造った物たちはやはり魅力的で、作品達が、造る人の鏡なわけであって、その人柄はとても鮮明に写ります。
そんな「Schatje Design(スカーチェデザイン)」設立者の鈴木佐知子さん。
彼女の生み出すデザインはどこかユーモアがあって、繊細で、まったく考えなていなかった部分に気づかされ、作品からは沢山の必然が生まれています。
最近のプロジェクトでは「糸髪環(いとはっかん)」という繊維工場で長年使われていた「木製糸巻き」を使い、ユーモアのあるアクセサリーパーツを作り出しています。
そのアクセサリーパーツはどこか懐かしく、そして新しい雰囲気を醸し出し、その使い道はイヤリングやネックレス、指輪にもなる。 デザインの発想も脱帽するセンスだ。
その見え方は一風変わっており、よくみると今や昔の髪型で設計され、指にはめるとまた違う表情に変化する。いろんな表情を浮かべる、大切な物に生まれ変わります。
その素材にあたる木製糸巻きも、今現在は新しい素材(プラスティック)になると言うことで、すべて捨てられる運命となるものですが、偶然なのか必然なのか、彼女に出会ったことで、その糸巻き達は違う形で新たな存在理由を得る、それは彼女の独特な考えと、物に対する志しが強く、愛情も深いからであろう。昔の糸髪環の存在価値を最大限に生かし、その歴史を映し出すように、そこから考えながら作業をこなします。
不必要な物を、必要な物に、昔の情景を大事にするその姿勢は、本当に見る者を魅了します。
彼女は、オランダ留学から帰国した後のプロジェクトで、2005年から旧世田谷区立池尻中学校の廃校再生プロジェクトである「IID世田谷ものづくり学校」の運営から企画、デザイン、建築関係のプロジェクトプランニングとデレクションを手掛けており、「カテゴリーを横断する立体表現」というテーマで活動。
彼女がオランダで師事したハイス・バッカーやテヨ・レミは、ぶれない感覚の持ち主で、すばらしい考えを持った人たちでした。
たとえば、テヨ・レミは「人間が消費社会に依存すべきではない」という理念の持ち主で、「いらなくなったものを利用して自分に必要なものを作るだけ」と語っています。
テヨの発想の根源は、無人島で生活しなきゃいけない状態で、手元にあるものを工夫して生きてゆくロビンソン・クルーソー。彼は、ずっと前からこうなることを予想していたんだろう、とさえ思う。
そんな彼の構築された考えに賛同した鈴木佐知子さんは、一歩先をもちろん読んでいたのかもしれない。
彼女の考えはおそらく、単純明快ではないかと。ただストレートにデザインという物はきっと、実用性をかけてはいけない。
生活は日々淡々と過ぎてゆく今の世の中。物は「要らなくなったら捨ててしまえばいい」という発想で、製品が入れ替わり立ち代わり、どんどん高性能になってゆき、毎年新作モデルが出たりと...。みんな新しいものにしか目をやらず、古いものには価値がなくなる。再生なんて出来るもんかと、、、
ただ、物が壊れなさすぎても、社会が成り立たないので、経済のバランスを考えると、矛盾した気持ちに捕われます、、、。
しかし、今現在はうれしいことに、「Schatje Design」が手がけた物のように、古い物にスポットをあて、古い物にしか出せない味があり、その情景を理解し、想像しそのぬくもりが伝わる上での物作り。、そういった着目点が素晴らしく気持ちがに引かれます。
物を大事にするということは、この先ずっと使えるように、次の世代にバトンタッチし、一緒に育てていく。「昔こんな物があったんだよ」と自慢出来るように。
Schatje Design project
鈴木佐知子によって設立されたデザインレーベル。武蔵野美術大学卒業。
オランダ留学を経て、デザインイベントの空間演出、飲食店舗内装デザイナーとして活動。
2005年より旧世田谷区立池尻中学校の廃校再生プロジェクトである「IID 世田谷ものづくり学校」の運営・企画、デザイン・建築関係のプロジェクトプランニングとディレクションを手掛ける。
現在も精力的に活動中。
text by ne.