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  • Posted on
    2009.11.24
  • posted by kenshin.

人類未踏の地はあるのか?〜ヤルツアンポ大峡谷〜



人類ってまだ足を踏み入れたことのない地ってあるのだろうか?っていう素朴な疑問から色々考察、リサーチしてみると意外にまだ人類未踏だと言われている所があるのに驚く。この21世紀にだ。

秘境という事が前提にあるのだろうが、意外に世界には何カ所かいまだ人類未踏と言われている地があり、人類未踏と言われているだけにもちろん公式にデーターがないものも多く、資料も多くはない。

その一つがチベット自治区にあるヤルツアンポ大峡谷である。

1993年、中国政府の派遣した探検隊によって初めて本格的な調査が行われた峡谷でそれまでは公的にその存在は明らかとされておらず、場所的にはチベット自治区にある為に政治的理由や5000Mクラスの雪山を徒歩で超えねばならないなど、地理的理由や政治的理由から未だ十分な調査が行われず全貌は明らかにされていない。
一応、公式に出ているデーターとしては平均海抜3000m、全長5046キロ、一番深いところは6009mで、世界一の大峡谷となっており、これはアメリカのグランドキャニオンをしのぐ世界最大の渓谷と言われている。
もちろん、未開の地には未確認の動植物が多く、世界の植物ハンター、製薬会社等も新しい植物の発見のために注目している地である。
1924年にはイギリスの植物探検家 フランシス•キングドンウォードとコーダー卿がヤルツアンポ大峡谷に探検に出かけているが渓谷があまりにも深すぎその南側は大ジャングル地帯であり途中で断崖に阻まれ不成功に終わる。 その探検の記録は「ツアンポー峡谷の謎」という本になり出版されている。

このような場所にはロマンティクな噂はつきない。
あのイギリスの作家、ジェームス•ヒルトンが1933年に出版した小説「失われた地平線」にも登場するヒマラヤ奥地にあると言われている永遠の楽園、桃源郷、謎の地下帝国「シャンバラ」の入り口がヤルツアンポ大峡谷にはあるとも言われている。

彼の第三帝国の創立者、アドロフ•ヒットラーもその魅力に取り付かれた男の一人である。

科学者達だけで構成された古代知識の歴史と研究協会「アーネンエルベ」という組織を発足し、科学的見知からのオカルト研究を行う部署を作っており、その探検隊を1930年代後半にあたりにシャンバラ調査にチベットやヒマラヤに送り込んでいる。

そのヒットラーに最も影響を与えた冒険家がいた、イリオンである。
1934年、ドイツの探検家 テオドール•イリオンはこの頃、鎖国状態にあったチベットに単身入国し2年間にもわたる単独調査と探検を続けついに地下帝国を渓谷で見つける。
このころ鎖国政策が厳しかったチベットでは外人となると命の危険すらあり、イリオンは髪の毛を黒く染め、現地人に扮装してまで潜入調査を行った人物である。
なんとか 命からがらでドイツに戻ったイリオンはこの冒険記を発表する。しかし、原版は第二次大戦の動乱によって失われていたり、戦後のどさくさで幻の本とされていた。
しかし、最近になり原判が大英博物館に眠っていたことが発見され、日の目を見るように50年振りに復刻されて徳間書店「チベット永遠の書」として邦訳されて出版もなされている。
彼はチベットの渓谷でシャンバラの入り口を発見しているのであるが、その場所がヤルツアンポ大峡谷とは残念ながら明記されてはいない。

第二次世界大戦後、中華人民共和国設立後の中国共産党政府による侵略、1950年の中国人民解放軍がチベットを制圧し全域を自国に併合したことにより、ますますこの渓谷は謎のベールとして包まれることになる。
1993年、中国政府との共同研究により日本人チームが渓谷河川側から調査を行うも渓谷の急流で一人行方不明者を出して失敗に終わる。
では陸路側からはという事で、1998年9月中国ヤルツァンポ科学考察漂流探検隊が調査を行うもジェマヤンツォン氷河から大峡谷の入り口のパイシャンまで下ったところで、先に進めなくなった。「渓流は90度垂直に流れ、渇水期には大小の岩がごろごろする中を進まなければならなくなり足を踏み外せば渓流の中へ真っ逆さまで、松林の中も危険が一杯だ。ヒルに襲われると、その毒素で出血が止まらなくなり、立ち上がることもできなくなってしまうという。」三聯生活週刊は当時の様子をレポートしている。

同年、数々の探検を行い成功を収めてきた、探検のエキスパート軍団 アメリカナショナルジオグラフィック協会が行ったカヤックでの河川側からの調査も 予想外の高水位に悩まされて探検隊の要である専門家のカヤッカーが水流に流され命を失い探検は終了となる。

このように頑固として人を拒み続けるこの大渓谷は人類にとって未踏の地であることは間違いはないとおもわれ、この情報フラット化の21世紀にまだまだ色々なノスタルジックなロマンを見続けさせてくれる彼の地であった。

しかし、夢見る者たちを白昼の現実へと引きずり出すような情報が飛び込んで来た、 中心網(CHINA NEWS)から驚きのニュースである。

それは、「ヤルツァンポ大峡谷、2010年までに総合的な観光地へ!」

世界最大の峡谷であるチベット自治区のヤルツァンポ大峡谷で、現在大規模な風景区の開発が進められている。2010年までに雪山観光、峡谷トレッキング、温泉リゾート、川下りなどのレジャーが一体となった観光地となる予定。
ヤルツァンポ観光センター、派鎮埠頭とナンバガワ(南迦巴瓦)展望台などもすでに竣工。観光客は水陸2つのルートで峡谷に入り、世界トップの風景を楽しむことができる、、、と書かれてある。


なんだか興ざめてしまうニュースである、人々の見た夢や冒険はすでに20世紀の前時代のものだったのであろうか? 21世紀の文明社会は人々のロマンまでフラット化にしてしまうのであろうか?

小学校の頃に読んだ海底二万里や少年ケニア、空でつながり海を渡った、まだ訪れた事のない遠くの国に思いを馳せるロマンティックな事など、この21世紀には全く無縁の事の様、想像する権利さえ剥奪していくのであろうか?

しかしながらまだ前人未踏という場所は何カ所か残されている。


コーカサス地方等はその一つだ。
アジアとヨーロッパの狭間にあり黒海とカスピ海にはさまれたユーラシア大陸最後の秘境と言われている。
コーカサス地方に広がる5000M級の山脈の大部分は人類未踏の地であると同時にこのコーカサス地方50の民族等が混在する人種の坩堝なのである。ここにはアルマと呼ばれる猿人の生き残りがいるなどロマンティクな噂が未だある。またレポートしていきたい。



地球はまだまだ色々なロマンや夢を見させてくれると信じている




TEXT BY KESO

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