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  • Posted on
    2010.05.14
  • posted by kenshin.

Didier Lestrade







「これを30年前にやってのか?」そのクオリティーに驚かされる パリの新しいギャラリー12 mailでのDidier Lestrade の回顧展を拝見して改めてそう思う。何もかもが新鮮である。

Didier Lestradeは偉大なパイオニアの一人だ

ヨーロッパで成功を収めたゲイ雑誌TETSUを始め様々なゲイ雑誌を立ち上げ、80年代初期、ただの性の趣向本と思われていたゲイ雑誌を全く違った角度から芸術品にまで押し上げた功績は大きく、ゲイカルチャーというカテゴリーが認識されたのも彼の功績であり、それまで一般のゲイということで差別的に見られてきた人々にプライドや勇気を与えた人物である事には間違いない。

彼はジャーナリストが口々に今、イブ•サンローランの死以後、最も影響力があるフランスのホモセクシャルでAIDSのアクティビストとささやかれている。

様々な顔を持つ彼の行ってきた中で1980年代に彼の手がけた「MAGAZINE TRIMESTRIEL」は雑誌業界にかなりの革新的な影響を与えたモノの一つ

それは何もかもが新鮮で雑誌のレイアウトやアーバンでモダンなイメージを使用した写真、編集手法、全く新しいやり方で誇らしげに厳格なイメージで世間に立ち向かったもの。

80年代初期のジャーナリストとしての彼の活躍による、様々な芸術という点とカルチャーという点を線で結びつけた功績は特に大きく、アバンギャルドなアーティスト、ディビット•ホックニー、キース•へリング、ギルバート•ジョージ、ピエール&ジル、、 ファッション界ではZandra Rhodesやビートニックの立役者である詩人アレン・ギンズバーグ、などをフューチャーしインタビューを行い、今まで独立していたカテゴリーをミックスしていくことやサブカルチャーのアイコンを発見し著名な人々のインタビューと公平同様に並べた手法は斬新であった。

さらに、当時全くアンダーグラウンドであった日本のGAY EROTIC ARTであった三島剛、木村べん、矢頭保、長谷川サダオ、高蔵大介、林月光、内藤ルネ、武内条二らの作品を、図版入りで数頁に渡って紹介。

今では当たり前に行われているアンダーグラウンド ミュージックカルチャーのレビュー等も彼が先駆けて行ってきた功績の一つ
NYの伝説のDJであった ラリー•レバンのparadise garageをフランスの新聞La Liberationに紹介したり、当時アンダーグラウンド ディスコの伝説的人物、Sylvesterのインタビューに成功する等、マガジン業界にかなり革命的な事を次々に行ってきた。
しかし1987年にマガジン制作を離れることになります。ディディエは「美しい雑誌を作る為にはますますお金がかかってくるのとすべての私の時間が取られ生活を圧迫していくのです、、」と語っている。

しかしながら彼の残した功績は様々なクリエーターに影響を与え続けてきたのは間違いなく、その影響はゲイ雑誌という枠にはとどまらず雑誌界やクリエーターに大きく影響を与えたものでした。
面白い事にディディエが語るに「影響を受けて私にコンタクトをとってくる人の多くは若くてストレートの人々」といいます。
今日、雑誌業界が不況の中、コンシュマー向けの媒体とインディペンデントでフィロソフィーのある雑誌との2極化が進んできているように思われる
しかし、いつも時代の先端を作るのはインディペンデントからの発信で場合である事が多く、ディディエのように20年以上時を経て一般の評価がついてくるというのが珍しくありません。

肩書きにとらわれない生き方や、クオリティーを追求していくクリエーターやアーティストを真の目で捉え、我々はしっかりとした評価をしなければならないのではないでしょうか?




image from 「MAGAZINE TRIMESTRIEL」




Didier Lestrade


アルジェリア生まれ。
1980年代にゲイカルチャーや雑誌業界に影響を与えたMagazine Trimestrielをインディペンデントで創刊し時代を変える。ジャーナリストとして90年代 イブ サンローランのスポンサーであった 大物インダストリアリストでありパトロンのピエール バーグの融資をへてTETSUを創刊。
HIV/AIDSアクティビストとしての顔を持ち、HIV陽性者の権利拡大運動の象徴的存在でありHIV/AIDSに関わる直接行動組織として一世を風靡した「アクトアップ」 AIDS Coalition to Unleash Power (ACTUP 力を解放するエイズ連合)のフランス支部を設立し、その後TRT-5というHIV陽性者の支援団体を設立。フランスのエイズ組織の連合で重要な役割を果たしている。 本人もHIV陽性者として公表しており人権運動にかかわる。

現在は作家として活動。





text by keso

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