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  • Posted on
    2009.08.22
  • posted by kenshin.

Cary Joji Fukunaga






例えば60年代のビートニックや80年代のFASHIONなど革新的で新しく思えたムーブメントも1960年、1980年の1月1日から皆揃って、詩を朗読したり、ネオン色の肩パットがはいった洋服を着始めたのではなく、染み込むように、知らず知らず増殖するように、気がつけばそこにムーブメントはあったと思う。 しかしながら、ターニングポイント的な人や事柄は登場し、「点」として浮かび上がり存在し、その一つ一つが「線」で繋がり概形をなしていき大きなムーブメントとして人々が感じ、見えるようになっていく、、

今年のサンダンス映画祭は実に映画界でも新しいムーブメントの「点」の様な作品が多く、まだ線としてのつながりとしては見えないけども新しい息吹を感じることができた。
新しいムーブメントの息吹の様な「点」である作品、人物が生まれたのは確かだ、その「点」になる作品のひとつが今回のサンダンス映画祭でCinematography Award を受賞した映画「SIN NOMBLE」だ。

上映されるやいなや旋風を巻き起こした。この作品を撮り下ろした監督ケイリー•ジョージ•フクナガは日本をルーツに持つ若き才能の映画監督という事が特別に興味をひかれた。
日本人の父親、スウェーデン人の母を持ち アメリカで生まれた彼は英語、フランス語、スペイン語を巧み操る、この映画もアメリカ人が撮った映画でアメリカ市場をターゲットとしているにもかかわらず全編スペイン語で作られている。

この映画『SIN NOMBRE』では移民の少女とメキシコのギャング集団に所属する少年の織りなす物語の中で、移民達がアメリカに辿り着く過程をリアルに描かれている。
実際、貧困から抜け出すために命を掛けてアメリカへと渡ってくる南アメリカからの不法移民者たちのその移動手段は電車やトラック等があるが、彼らは警察に逮捕されたり、時には殺される事もあり、多くの者は夢半ばで敗れ、数少ない者がアメリカに不法移民として入国するのである。
ケイリー•フジナガはニューヨーク・タイムズ紙に載っていたトラックの貨物に乗った80人のメキシコ人移民が発見され、そのうち17人は既に死亡していたという記事に興味を持ち本作のアイデアに結びついたと語っている 実際に監督自ら現地に赴き、アメリカ国境に向けて走る電車に乗り込んで不法移民志願者と共に旅を行ったり、移民達がアメリカに辿り着く過程を徹底的に調査している。
このサンダンス映画祭、そもそもは1970年代後半に映画製作者たちをユタ州に惹きつけるのを狙いとして、俳優であるロバート•レッドフォードが始めたのがきっかけで現在、インディペンド映画を対象に数万人規模で行われ、ケビン•スミス、ロバート•ロドリゲス、クエンティン•タランティーノ、ジム•ジャムシュー等を有名にし、「ブレアウィッチプロジェクト」 「セックスと嘘とビデオテープ」などの作品もこの映画祭から出た。
この映画祭が他を圧倒しているところは、第二・第三のタランティーノやロドリゲスを探しに映画会社、エージェント等が押し寄せることでも有名だからである。
応募作品8000点を超える映画祭の中で受賞を勝ち取る作品は常にアイデアと情熱で満ちあふれている。

気になるのは、この監督の脇を固める人々であろう。 ガエル・ガルシア・ベルナルとディエゴ・ルナがプロデューサーとして参加 『天国の口、終りの楽園。』でヴェネチア国際映画祭でマルチェロ•マストロヤンニ賞を受賞、「モーターサイクル•ダイアリーズ」の演技も記憶に新しい、若き才能あふれる俳優二人は母国メキシコで新しい映画制作会社を立ち上げる。
国境を越え、この3人のチームからなる新しいジェネレーション達の作品がこのサンダンス映画祭でCinematography Award を受賞した事実は新しいムーブメントが始まる予感がしてならない。




TEXT BY KESO


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