マルレーネ•デュマス
幼少期をアパルトヘイト期の南アフリカ共和国で過ごす。現在、オランダ在住で活動を行う最も注目を集める画家
一見、アウトサイダーアートと思わせるようなタッチが目立つが、その奥には実在主義的な要素が含まれ完璧に現代美術の世界に影響を及ぼすことのできる狙いすまされたかのごとく練り込まれたテーマが多い。
マリリンモンローの死後の顔、ドイツ赤軍派のリーダの顔、やトップモデルを題材にしたもの等も目立ち現実の世界とフィクションの世界を見事に交差させながらもかなりショッキングな題材のもを描き続ける反面、ハッとする瑞々しくピュアでイノセントな表情をうまく表現したクローズアップの人物作品も目立つ。
大半の作品には人種、死、性、宗教、政治などメッセージ性の強くショッキングなものが多いのが特徴であるが何とも言えぬ配色の淡いタッチやアンパーフェクトな筆使いや独特な質感等は一度見たら引き込まれるすばらしいものばかりである。
表現のコントラストや道徳観念、性や死に対する描写等、幼少期に育った生い立ちが影響しているのか、人間の本質に迫るものが多く20世紀の負を背負い込んだような作品群の中に驚くほど未来を見据えるかのごとく希望にあふれた繊細な「生」の息づかいが垣間見れる作品も多く、その辺りのボーダーをうまく行き来する感覚が非常に評価に値するすばらしいアーティストである。
決して多作ではない彼女の絵を収集する人々は現在の美術界における投資目的のコレクターでなく彼女の作品を一生手放さないと誓うコレクターが大部分を占めるというところに真の価値の評価がある気がします。
text: keso