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  • Posted on
    2009.04.02
  • posted by kenshin.

マーサ • キャマリロ 「Fletcher street」




世界はフラット化していると言われている昨今、相変わらず持てる者と持てない者の差は開いたままで、その差はますます広がるばかり。その持てない者として社会の底辺で生活する者達は必死に這い上がろうとする者、あきらめてしまう者、社会や現実に立ち向かい必死に戦う者。
戦い方は人々により様々だ。
その様々な戦い方は時に大きな力となり社会を揺り動かすことになりえる、そこから産まれる文化や様々なムーブメント等と言うものも例外ではなく大きな力になり得るのではないだろうか
1970年代にはイギリス・欧州においては、パンクムーブメントは「若者たちの反抗と怒りの音楽」として認知されていたし、最近では世界的ファッションフォトグラファー、デヴィッド・ラシャペルのデビュー作映画である「RIZE」においてもL.Aのサウスセントラルの貧困地区地帯である人々の暮らしの中で出口の見えない現実に対しての怒りが肉体表現として"クランプ・ダンス"という新しいムーブメントを生み出し、そこにかける人々を追いかけているのも記憶に新しい。
写真家 マーサ•キャマリロの写真も例外ではない。
独学で写真を学び、写真家としてNYを拠点とし活動する彼女はアメリカ、フィラデルフィアの貧困地区地帯で衝撃的なカルチャーに遭遇し、その新しいムーブメントを写真をとおして記憶にとどめ作品として残している。
アメリカ フィラデルフィア ー アメリカ合衆国独立の地と知られ映画「ロッキー」の舞台ともなり、映画「フィラデルフィア」でもよく知られた街だが、この街は日本と違ったドーナツ化現象が起こっている。便利な街の中心や快適な郊外に住めない低所得者層が街ハズレにドーナツ状に分布している。つまり、街のまわりを危険地帯が取り囲み、そのまた周りを郊外が取り囲んでいるのだ。その街の外れにある低所得者層の暮らす街はドラッグと失業が慢性的に蔓延しており、崩壊しかかったビル、人気の無いアパートメント、壊れて放置された車やドラッグを摂取する為の使用済みの器具がストリートには散乱し、ドラッグディラーや犯罪が日常的にはびこるゲットー地帯である。
その地域のFletcher streetで写真家マーサ•キャマリロは衝撃的な物に出会うことになる。




それはどこでも見かける様な髪の毛をブレイズに編み込み、アディダスのスニーカーを履き、ヒップホップの格好で身を包んだ黒人達だった。 決定的に違ったのはその彼らが路上でバイクにまたがる様に"馬"に乗り公道でホースレースを楽しんでいる姿であった。
" 馬? このゲットーの真ん中で??? "
この光景に魅了されたマーサはFletcher streetに通い彼らの写真をおさめ続けることになる。 この貧困地区のFletcher streetの人々の暮らしも例外でなく貧困が横たわり、ゲットー地区で失業、ドラッグからの誘惑、犯罪や貧困と闘い続ける人々である。
彼らはローエンドオークションで競走馬として使い物にならなくなった屠殺される寸前の馬を救い、譲り受け、Fletcher streetの廃屋になったビルを厩舎として使い地域ぐるみのコミニティーで馬を飼い、育て、みんなで世話をしていくことで大人から子供達へ道徳を伝え、コミニティーの結束を固めたり様々な事を馬やそれに携わる人々から学んでいき、プライドを育んでいくことで貧困やドラッグからの誘惑等と闘う力を養っているのだ。




荒れ果てたプレイグラウンドや道路、廃墟と化した学校跡等で彼らは乗馬レースを行っており、Flecher streetの黒人達はオーバーサイズのズボンを腰で履き、ヒップホップの装いで革の手綱を握りピカピカのアディダスのスニーカーで鐙を踏みながら乗馬レースを楽しむ。
その姿はかなり衝撃的でまさにニューカルチャー、新しいムーブメントではないだろうか。
その彼らを発見し、ポートレート、記録写真として"アーバン•ホースライダー"を撮り続けるマーサ•キャマリロの作品はただ単に文化的に新しい局面を照らし出す作品としてではなく社会的にも大変価値のある作品と言えるのであろう。 その証拠に彼女のこのFletcher streetを題材にした作品が"LIFE"誌のカバーを飾ることになる。 彼女の視点は素晴らしく、サブカルチャー的要素をARTまで引き上げるセンスでNEW CULTUREを発見しARTとSOCIALのクロスオーバーした素晴らしい表現手段は見る者を魅了し、我々に様々な事を問いかけてくれる。まさに21世紀的表現手段ともいえるであろう
彼女の発見したあたらしいムーブメントは社会を揺り動かす大きな力となり得ることを期待したい。


マーサ・キャマリロ
アメリカ テキサス州出身の写真家。 独学で写真を学びNEW YORK TIMES MAGAZINE, TELEGRAPH,NUMERO,JOURNAL,I-D等で活躍。
現在、NYをベースに活動を行い、ORCHARD REP(www.orchardrepresents.com)に所属する。 POWER HOUSE BOOKS から彼女の2冊目の写真集となる「FLETCHER STREET」を出版。












text by keso



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