ニューヨークのアートシーンを牽引してきたギャラリスト、ジェフェリー・ダイチ
彼の名前はアート界では知らないものはいないと言われている。
これまでに彼はオノ・ヨーコ、アンディ・ウォーホル、キース・ヘリング、ジャン・ミシェル・バスキア、ジェフ・クーンズなどトップアーティストを手掛け、森美術館(六本木ヒルズ)やギリシャの実業家ダキス・ヨアヌーなど世界的な美術館やコレクターのアートアドバイザーを務めている。
そのため、「アート界のミダス王」とも称されていた彼ですが、LAのMOCAのディレクターに就任することになってそれまで経営していたダイチ・プロジェクツはその扉を閉めることになった。
そのダイチ・プロジェクツの元ディレクター、キャシー・グレイソントが
この夏にソーホーにTHE HOLEという新しいギャラリーをオープン。
そのTHE HOLEギャラリーのあるソーホーエリアにほど近いNY ダウンタウンのHOUSTON&BOWERYストリート近辺
このあたりのエリアは80年代はかなり危ない地域でNYパンクを産み出したあの有名なライブハウスCBGB(今はもう無い)やバスキアのアトリエ等があった事で有名なエリア。
2000年代に入り NEWミュージアムやBOWERY HOTEL等ができファッショナブルな感じでヒップなエリアへと見事に生まれ変わり、オーガニックフード旋風を巻き起こしたWHOLE FOOD(スーパーマーケット)もこのあたりにあったりするのだが、何よりもこのHOUSTON&BOWERYストリートに気になる壁がある。
それはDeitch Wall と呼ばれている壁。
今年の12月に入り、その壁に突如としてTHE HOLE ギャラリーのお抱えアーティスト KENNY SCHARFの新作壁画が現れ、NYのアート好きな人々やおしゃれに敏感な人々等を大いに驚かせた。
しかもかなり巨大。
この壁、実業家であり不動産王のTONY GOLDMAN とジェフェリー・ダイチが手を結びGOLDMANのサポートで彼の持ちビルの壁を貸し出し、アートプロジェクトとしてDAITCHギャラリーがプロデュースして行っているもの。
最初のプロジェクトはもともとこの壁に描かれていた1982年のキース へリングのグラフィティーを再現、そしてOs Gemeos、OBAY GIANT、 Barry McGee など様々な新鋭グラフィティーアーティストをフューチャーして壁画のアートプロジェクトが行われている。
どこぞの国の地方自治体が掲げる「街にアートを!」みたいな、どういった経緯で選抜されたのかよくわからない意味不明な彫刻が駅前に立ち並ぶ、お役所型の緩~いアートプロジェクトでは決して無い。
しっかりとした実績のある人達が手を結びプロの目線のキューレティングのもとで行われ、街の景色を染め上げるアートプロジェクトに素晴らしい情熱を感じざる得ません。
それにビジネスや社会的な成功者がこういう形で手を取り合って社会や文化へ貢献していくのには頭が下がる思いです。
やはりこういった国や地方自治体を頼らないようなそれぞれのプロフェッショナルな人々が熱い思いで作り出すクオリティーの高いパブリック プロジェクトが街や新しく出て来るアーティスト等を刺激して活性していくのでしょう。
TEXT BY KESO