アニッシュ・カプーアの作品の魅力は、非常にシンプルな形や素材から宇宙的な広がりを形成し、展示空間そのものを異空間に変換してしまうところにあります。作品の中のちょっとしたくぼみや湾曲が果てしなく深く続く穴のように見えたり、鏡のような素材が思いもかけない角度で風景を映し出したりなど、既成の空間概念をくつがえすような新たな体験や驚きに満ちています。
また、神話世界や哲学的な考察から派生したコンセプトに基づき作られた作品は、視覚的、体験的な楽しみと共に、神秘や官能といった極めて原初的な感覚を呼び起こしてきます。このように作品が親しみやすさと奥深さを併せ持っているゆえに、実に多くの人々の心をとらえているのだといえるでしょう。
アニッシュ・カプーアは1954年インド、ムンバイ生まれ、現在ロンドン在住。
幼少期をインドで過ごした後、17才で渡英し、1970年代より作品制作を始めます。初期には、立体の表面を顔料で覆う作品を多く制作し、後に、岩盤のような床に切り込みや穴を開け、内部を顔料で覆うことにより洞窟の入口や大地の亀裂を思わせるような造形物を作るようになります。また、ステンレス・スチール、漆といった素材、蒸気そのものを作品に取り入れるなど、多様な表現を展開してきました。これらの作品は、我々の視覚や日常的な認識の再考を促し、次元を越える未知なる世界を生み出しています。
1990年ヴェニス・ビエンナーレで英国館の代表となり、翌年にターナー賞を受賞。以後英国を代表する現代美術作家の一人であり、他に類をみない独創的な作風は常に注目を集め、世界各国の美術館で展覧会を開催してきました。2009年秋にはロンドン、ロイヤルアカデミーで個展が開催され、赤いワックスを打ち出す大砲や、絞り出された大量のコンクリートの塊といった作品を発表し、大きな話題となりました。
彼の個展はロンドンのテート・モダンやヘイワード・ギャラリー、スイスのバーゼルにあるクンストハレ、スペイン・マドリードのソフィア王妃芸術センター、カナダのオタワ、ベルギー、フランスのボルドー、ブラジル、ニューヨーク近代美術館、イタリアのミラノ、ビルバオのグッゲンハイム、オランダなどで開かれたことがある。また、日本の金沢21世紀美術館[1]など各地の美術館に作品が恒久設置されています。
2003年には大英帝国勲章CBEを受章し、まさに英国を代表するだけでなく現代の誇る世界的アーテイストとして評価されている。
また、パブリックアートの仕事も多く、シカゴの市街地には「クラウド ゲート」というステンレス製の大作が設置され
日本にも美術館のコレクション、パブリックアートなどの作品は数多く、その中でも大規模なものに2004年にオープンした金沢21世紀美術館で部屋全体を作品化したコミッションワークがあり、パーマネントコレクションとして公開されたのは記憶に新しい。
東京都立川の安田火災ビル北側にも「山」と題した作品が観覧する事が出来るなど、国内での個展は1999年のSCAI THE BATHHOUSEにおいて日本で初めての本格的な作品紹介以降、2005年に更に繊細でインパクトのある展覧会を開催し日本においてその圧倒的な存在感を知らしめた。
近年にはアニッシュ・カプーアが手掛けたブルガリのジュエリーが登場したのは記憶に新しい。現代彫刻家として新たな新境地と、可能性を見せつけた。
カプーア作品の特徴的な素材であるステンレススチールが使用され、ちょっとしたくぼみの鏡面が思いもかけない角度で風景を映し出す素晴らしい仕上がりになっている。
B.zero1というシリーズは20世紀に入る時新世紀の始まりをお祝いして新シリーズとして誕生したもの。
ブルガリのBzero.1のデザインコンセプトを組みつつ、自身の作品にも共通されたある種の普遍性を見出した結果、デザインという枠を超えた世界がこのリングには存在し、そのたたずまいは「彫刻」といっても過言ではない。
アニッシュ・カプーアの作品の魅力は、非常にシンプルな形や素材から宇宙的な広がりを形成し、展示空間そのものを異空間に変換してしまうところにある。その体験はだれにでもわかりやすく、その奥にはカプーアが考える深くて広い哲学が存在する。by hf online
そして来る 2012年 ロンドン五輪の会場となるLONDO東部ストラットフォードのスタジアムに隣接する五輪公園に、
56案の中から厳選され、カプーアの設計のタワーが建設される事が決まり着々とその準備が行われている。
複雑にねじれたデザインのスチール製の赤いタワーは高さ115メートルで、NYの自由の女神をも上回り、
上方にはガラス張りの円形展望台が設けられ、1時間当たり700人がスタジアムを含む景色を楽しむことができる構想である。
これを期に更に、カプーアが全世界の人を壮大なロマンとイマジネーションと共に異空間へと導いてくれる事だろう。
reference
wikipedia
text by HM