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映画監督としてのトム・フォード
Nocturnal Animals - Tom Ford
2016年のヴェネツィア国際映画祭やトロント国際映画祭、ロンドン映画祭でも上映され話題なったトム・フォードの最新映画。
作品は、オースティン・ライトの小説「ミステリ原稿(Tony and Susan)」を実写化したもの。ロサンゼルスのアートギャラリーのオーナーであるスーザンのもとに、元夫から2人の関係を描いた小説が送られてくるところから物語が始まる。
監督、脚本とトム・フォードがつとめ前作の「シングル・マン」に続きアベル・コジェニオウスキが音楽を担当。美しい世界観を作り出している。作品には、トム・フォードのこだわりがいたるところに見受けられ音楽はもちろん、インテリア、背景どこのシーンで切り取っても画になる美しさ。さすが!
また、主人公のスーザンには過去のトム・フォード自身を投影しており、この作品を通して"お金と幸せの関係"に気づくことができたとインタビューで語っている。今は、パートナーや子供に囲まれて充実した生活を送っているが、過去にはアルコール依存や鬱で長年悩まされていたそう。
デザイナーの仕事に関しては、「自分はアレキサンダー・マックイーンのようなアーティストではない。デザイナーであると同時にビジネスマンだ。」と語っており、それに対し映画の製作は「自分の中で最もアーティスティックな仕事」だと。前作の「シングル・マン」のインタビューでも「映画は、普段の私のイメージとは違うかもしれない。だからこそ、一番自分らしい作品と言えるだろう。ファッションは束の間だが映画は永遠だ。私は若い時に物質世界でかなり成功した。経済的安定、名声、仕事の成功、必要以上の物質的所有物、、私は私生活を満喫していた。だがなんとなく自分の道を見失っていたんだ。人生でいちばん素晴らしいことは、少なくとも私にとっては、繊細な事であることが多い。振り返って見ると、小さな事に気付かされる。誰かの匂いとか、ある日誰かが言った言葉とか、庭を横切る時の犬の眼差しとか、とても小さな事だ。そういう小さな事にフォーカスを当て、それが折り合う様を描きだす。それこそが、忘れがちな私たちの人生なんだ」と。
デザイナーとしての華やかなトム・フォードしか知らなかったので、このインタビューを読んで正直、以外だった。
トム・フォードでもこんな事を思うのだと。
彼のデザインする洋服は、とても繊細で美しく至る所にこだわりが感じられる。確かに映画もファッションも"何かを産み出す"という作業は同じで、単純に作品に向き合う時間が長い映画の方が、その人が色濃く反映されるということだろうか。
「Nocturnal Animals」は、日本では秋に公開されるので普段見ることのできない、トム・フォードの内面的な部分を観ることができるかもしれない。
トレーラー:Nocturnal Animals
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