アルベール・ロビダ 「20世紀」
21世紀に入りすでに十何年、今では20世紀によく描かれた輝かしい未来図みたいなものはあまりお目見えし無くなった昨今、あまりにも情報の波に飲み込まれ人間の想像力や夢を見る力などは衰え始めたのか?それともSF的な未来観には限界があるのか?
そんな未来が見えないという現在で面白い本が130年ぶりに復刊した
今回紹介する本書は前述した様に130年ぶりに復刊され蘇った原典初版本(1883年刊)を完全復刻
130年前に次の世紀の未来を予測し、掲示した素晴らしい1冊
フランス19世紀の末、日本がまだ明治時代だったころに、そんな未来世界を想像し予想した作家がいた 『地底旅行』『八十日間世界一周』のジュール・ヴェルヌと当時の人気を二分したフランスの奇才、アルベール・ロビダ。
本書は彼の幻の空想近未来小説が130年ぶりに新訳で朝日出版からよみがえる
新訳版が出るまでは国会図書館で旧約版の1883年版の原典初版本しか見る事ができなかったが、この新訳版を改めて読んでみるとロビダの素晴らしい想像力と未来を読む力に驚愕する。
19世紀末のロビダの予測した未来観は少し内容を紹介すると奇想天外な空中船が飛び交う近未来のパリ。人々は家にいながら世界の情報にリンクし、株を買いあさっては一喜一憂。国家のボーダーはなくなって、10年に1度の革命に歓喜し、科学技術の進歩だけでなく、それによる社会の進歩についてもなかなか正確に予見している。例えば女性の社会的権利拡張ズボンの着用、喫煙、女性医師・弁護士の出現、大衆の観光旅行、環境汚染、戦争の新技術やインターネットの出現やテレビなども予見して描かれている。1883年の時点でというのが驚きである。
宮崎駿の天空の城ラピュタのオープニングにも彼の挿絵が使われたりとロビダ自身による300点を超える挿画は眺めるだけでも楽しい。
彼の挿絵を収集している作家 荒俣宏氏はこの本書の帯にこう言葉を寄せている
「アルベール・ロビダ『20世紀』に酔いしれる! 19世紀には、もうひとつのSF全盛期があった! ターゲットは20世紀、その中心地はフランス。まるでシャンソンのように小粋で、ほろ苦いフランスSFにあって、ジュール・ヴェルヌと覇を競った諷刺まんが家アルベール・ロビダの描く「なつかしの20世紀」に心ゆくまで酔いしれる!」
アルベール・ロビダ
1848年、フランスの小都市コンピエーニュ生まれ。諷刺・挿絵画家、小説家。
1880年に創刊された週刊諷刺新聞『ラ・カリカチュール』の編集長として活躍。1880年代刊行の「20世紀3部作」(『20世紀』『20世紀の戦争』『20世紀、電気生活』)により、ジュール・ヴェルヌと並ぶ近未来小説の先駆者と評される。