THE SALON STYLE JOURNAL

INFLUENCE

リアルロボコップの世界まで もう一歩?


1987年公開の映画「ロボコップ」ってご存知だろうか?
ストーリは近未来のデトロイト。かつて自動車産業で栄華を誇ったこの街は犯罪都市と化し、巨大コングロマリット企業オムニ・コンシューマ・プロダクツ(OCP、通称オムニ社)によって民営化された警察が舞台で活躍するアンドロイドの警察の話である。

その話ももう現実のものと化しそうな勢いである、ご存知の通り昨年、アメリカのデトロイド市が財政破綻し大きな波紋を呼びましたが、後、どうなったかというと、現在、デトロイト市の失業率は、約19%に達し、人口の約4割は極貧層となった。
不動産価値も暴落し、この5年間で市の財産税収入は約20%、所得税は約30%へ縮小しています。
軒並み、犯罪率も急上昇し、8万を超える住宅物件が荒廃屋化してる次第。

ところで、フランスのルモンド紙が報じていたコラムに興味深い記事が出ていましたので、そのまま転載しておきます。
これが、アメリカのルイジアナ州の刑務所ビジネスに関する話なのですが、何だかだんだんきな臭い方向に変わっていっています



ルモンド紙より
「州の財政難と郡立刑務所への依存」
 アメリカでは、2012年、入所受刑者の人員が約3万人減った。3年連続の減少である。各州は、財政難に直面し、もはや「全刑務所」の費用を負担することができなくなっている。地方レベルの政界においては、刑務所における入所・出所の流れを良くすべく、滅多にない全会一致の状態で共和党と民主党が意見を一致させている。このため、カリフォルニア州――2012年には全米の減少数の半分に相当する入所受刑者が減ったのは同州である――やテキサス州などでは、刑罰を軽減しこれに代わる対応策を講じることが課題となっている。

 一方、ルイジアナ州では、倒産犯罪に対しては10年の禁固刑が維持されていて、強盗罪の再犯にはいまだに24年以上の刑が科されている。受刑者の人口比は過去20年で倍増し、地球上のどこにも見られないほどの水準に到達している。現在4万4,000人強の受刑者が刑務所に収監されているが、これは人口86人に1人に相当する。この数字は、全米平均の約2倍、中国の13倍となっている。

 さらに気になるのは、この地域全体の経済が、このように高い収監率に支えられて存続しているということである。実際のところ、ルイジアナ州政府は、1990年代初頭にファウスト的とも言うべき協定[悪魔との契約の意――訳注]を締結したのである。収監人員が限界に達した時、同州には、刑期を短縮するか刑務所を増設するかという二つの選択肢があった。そして後者の解決策が選ばれた。しかし、慢性的な財政赤字を抱える州政府は、建設費用を負担することができなかった。このため、農村部のパリッシュ(郡)の保安官(注1)に対して、パリッシュ・ジェイル(郡立刑務所)と呼ばれる地方刑務所を建設・運営するよう奨励することとなった。

「郡立刑務所による雇用創出」
 田舎のパリッシュ(郡)にとっては大きな負担となるこのような投資に対して、州政府は、収監費用として受刑者1人1日当たり24.39ドルを郡保安官に支払っている。ちなみに、ルイジアナ州立刑務所に収監する場合は、55ドルの費用がかかる。12の州立刑務所(長期受刑者用)に対し、160の郡立刑務所が人里離れたパリッシュに点在している。アカディア、ビアンヴィル、ボールガール、カルカシューといった、名前にフランス系移民の言葉の語感を持つパリッシュである。

 郡立刑務所によって雇用が生み出される。地方の住民は、綿産業の不況に直面しているため、こうした雇用創出に完全に依存するようになっている。「このように景気の悪い辺ぴな場所では、刑務所がビジネスになりました」とルイジアナ大学ラファイエット校の犯罪学者バーク・フォスター客員教授が説明してくれた。多くの住民にとって、最善の職業選択は看守になることである。給料は安い(時給8ドル、すなわち約6ユーロ[約800円――訳注])けれども、退職後にはかなりの年金が保証されるからである。

 最大の投資利益率を確保するためには、稼働率が最大に保たれていなければならない。さもなければ、刑務所は、収益性を失い、看守の解雇を余儀なくされ、ついには閉鎖しなければならなくなる。「ホテルの建設にそっくりです。収益性を確保するために、郡保安官は、刑務所を受刑者で埋めておかなければならないのです」と、タイムズ=ピカユーン紙[ルイジアナ州ニューオーリンズの日刊紙――訳注]で女性記者として働いていたシンディ・チャンさんは言う。このため、郡立刑務所の看守長たちは、毎朝、受刑者を回してもらうために大都市の刑務所に電話をかけて回っている。州内最大のニューオーリンズや州都バトンルージュといった大都市では、刑務所の定員が超過しているからである。このような受刑者の移送は、多くの場合、看守長仲間のコネによって行われる。田舎の刑務所の中には、この仕組みを非常にうまく利用しているため、受刑者を回してもらうのに電話をする必要がないというところもある。「哀れな受刑者たちを利用して金を稼ぐのは好きではありません」とチャールズ・マクドナルド郡保安官は言う。彼は、刑務所を所有するリッチランド郡の郡保安官である。リッチランド郡は、州北部に位置する人口2万のパリッシュ(郡)である。「しかし、どのみち彼らは刑務所に行くのですから、行くのが私のところでも同じことです」

「80人の大部屋」
 ルイジアナ州政府は、25年前から一つも刑務所を新設していない。田舎のローコストな刑務所が、今日、同州の受刑者の半数を収容している。入所者一人当たりの予算は極限まで減らされていて、その結果、生活環境は最低のものとなっている。フォスター客員教授は言う。「保全費、看守の給与、そして群保安官の利益を除くと、受刑者のための予算は大して残りません。受刑者は、数十床の大部屋で寝ています。一部屋80人になることもあります。食費はごくわずかで、医療は提供されません」。

 郡立刑務所は、1年未満の刑に処せられた受刑者のためのもの、ということになっている。しかし実際の平均在所年数は、8年半に及ぶ。ほぼ5人に一人は10年以上の刑に服していて(注3)、しかも矯正教育を受けることは期待できない。ルイジアナ州では、皮肉にも、社会復帰政策は、事実上、長期刑や......場合によっては終身刑を科された受刑者専用のものとなっている。古くからある州立刑務所では、受刑者に対して、精神的ケアや医療、さらには娯楽や就労訓練プログラムまでもが提供されている。アヴォイルズ刑務所では、毎年、ロデオ大会が一般公開で開催される。アンゴラ刑務所の受刑者は、大多数が終身刑に服しているが、ここでは自動車修理工や暖房設備工の職業訓練が行われている。郡立刑務所にはこのようなものは一切無い。「ルイジアナ州では、社会復帰策は、刑務所から決して出ることのない人々によってほぼ独占されています」と、非政府組織ルイジアナ少年司法プロジェクト(Juvenile Justice Project of Louisiana)のダナ・カプランさんは嘆く。

 選挙で選ばれた住民代表である郡保安官たちは、刑務所からの収入を、部下の新しい備品の購入費用に当てている。車両、武器、コンピュータ、防弾チョッキなどを買うのである。刑務所の利潤がいくらかを正確に計算するのは難しい。一人当たりの食費は1日1.5ドルにも満たないし、娯楽や社会復帰のための活動予算は微々たるものである。だから、必要経費が州政府による24.39ドルに達するはずはない。出所時に一人一人の受刑者に気前よく与えられるバス・チケットと10ドルを計算に入れたとしてもである。


実は現在レントシーキングと呼ばれるアメリカにおける公共セクターの民営化、規制緩和の進行具合は半端ではない。 
刑務所という資産は政府が保有したまま、運営について「民間刑務所株式会社」が委託を受ける。そして、信じ難い話だろうが、民間刑務所(株)の売上は「刑務所の稼働率」により決定される。
すなわち、刑務所の稼働率が高ければ高いほど、民間刑務所(株)の売上や利益が増える仕組みになっているのが現在のアメリカの仕組みになってきています
もちろん財政破綻したデトロイド市は公務員給料を払う事をカットしていかねばらないのでこういったレントシーキングに手を出すという事は普通の流れになっていくでしょう、そうなると刑務所も犯罪率のあがった都市での刑務所の稼働率は高くなり民間刑務所の設置を受け入れる流れにもなりかねません
なぜかというと、現在、アメリカの投資家は投資先に刑務所というビジネスに目をつけているのです。
現在、アメリカの下院で審議中の法案の中に、「移民制度改革法案」がある。本法案は国境監視や不法就労取り締まり強化の内容を含んでいて、本法案が成立すると、間違いなくアメリカの刑務所に収監される不法移民が増えていき、刑務所の収監者が増えると、即ち「刑務所の稼働率」が上昇し、民間刑務所(株)は売上が高まるのと同時に実はほぼ低賃金の労働力が確保される仕組みになっています。
どういった事であるかというと、収監者を「低賃金労働者」として使われるのは、何も土木プロジェクトとは限らなくなり、すでに企業のコールセンターの業務に収監者が就いているケースもある。
企業から見れば、正規社員はもちろんのこと、派遣社員を雇うよりも民間刑務所(株)に収監者を派遣してもらった方が、安上がりで済むという話
アメリカで企業の相談窓口に電話をかけると、実は「刑務所内に設置されたコールセンター」に繋がっていたり、もし、これが民間企業の工場と複合されるとどうなるか?
国内で低賃金労働力を確保ができ、他国の労働力を求めずともmade in usaが確保できる上に外国からの商品の輸送費も削減できるのである
さらに刑務所の稼働率を高め、さらに収監者を派遣として働かせることで、民間刑務所(株)の利益は最大化され、株主に配当金が支払われる
そうなってくるともうそのままロボコップの映画の舞台が出来上がってしまう条件は整ってきています。
まさか80年代の後半に見た映画がまさか現実になろうとしているのかと思うと、ちょっとぞっとしてしまいます。
知らない間に進んでいる社会の物事、もう少し私たちは目を凝らしていく必要があるのではなかろうかと思います









資料 ルモンド紙、週刊実話

  • 2017.4.04